Comprehension-Based

Language Acquisition Methods

「理解できる」が中心の言語習得方法


英語教育の目標を効率よく達成するために、理解できる英語を脳にまずインプットするという習得方法を授業で使います。

練習といえば、喋ったり、書いたり、単語を暗記したり、文法の練習問題をしたりすることだと思われていますが、理解できる英語をもっとたくさん読んだり聞いたりすることが、意味のある本当の練習だと気がついている人はあまり居ません。

上記の目標を短期間で到達するためには、理解できる英語を大量に吸収できる環境を整えるのが教師として第一の仕事です。日本では、授業以外に英語を吸収する場所がほとんどありませんから、教授方法をそのようにしなければなりません。また、家庭学習である宿題も同じ方法を使うとより効率が良いのです。

私の授業は、インプット理論(Krashen, 1985)が提案する習得方法を採用しています。インプット理論は5つの仮説から成りますが、5つの仮説とは以下の通りです。

  1. 言語は学習するのではなく、習得しなければ即戦力につながらない。

  2. 母国語と第二言語習得は似た経過をたどることが明らかになってきた。その習得順序は易しいからとか簡単だからという理由で、先に習得するとは限らない。外国語の教科書や授業で紹介されている順番とは違うようである。

  3. 文法学習は自分の間違いを直すのには役に立つが、コミュニケーション養成には役立たない。

  4. 楽しい不安のない環境がより効果の高い習得を助ける。

  5. 人間は理解できるメッセージを聞いたり読んだりすることで、言語を習得する。理解できる内容を英語で聞いたり読んだりすることで、以前から分かっている文法や単語を使って、未だ分からない文法を習得していく。

(あ) 会話は、言語を習得した結果できることであって、会話をしたから言語を習得できるのではない。

(い) 話されていることや読んでいる本を習得者が理解したら、そして、そのインプットが大量にあったとしたら、必要な文法は自然にそのインプットの中に含まれている。教員は故意に言語についての規則を教える必要はない。(Krashen, 1985:2)

インプット理論

伝統的な言語学習方法に対して、「インプット理論」という新しい第二言語習得理論が提案されました(Krashen, 1985)。この理論は、言語能力の習得の原因は学習者にとって理解できるインプットであって、それ以外のもの、アウトプット(会話や作文の練習)や間違いを直してもらうことなどは習得には直接つながらないと考えるものです。

伝統的な学習方法では、正確さは精読で養成し、流暢さを多読で養成すると考えていましたが、インプット理論では、聞いたり読んだりする「理解できるインプット」を通して、流暢さも正確さも両方養成すると考えています。伝統的なやり方の中では、精読(英文和訳)が主役で多読という名称で実践された読書は補助学習でしたが、Krashen博士が提案した理論の中では、読書を含む分かるインプットが中心です。補助学習ではありません。

インプット理論が提案する読書は、それだけでほとんどのことができるというメイン・プレイヤーです。そのやり方は、易しい外国語(英語)の本を、学習者が自分の興味で選んで、読みながら、無意識のうちにその言語(英語)を習得する方法です。この「自然に意識しないで」というところが伝統的な学習方法と違うところです。意識して、理解したり、覚えたり、頭に無理に詰め込んだりということをしません。

無意識といっても、英語習得という目的で、学校で授業を受けていますし、その難しさや興味によって本を選択しているし、読みながら、この単語はどういう意味だろう?などと思いながら、読んでいるので、母国語を読んでいるときほど言語習得に対して無意識というわけではありませんが、文法を勉強するためではなく、物語の意味や内容に重点を置いているということを意味します。

文法知識があり、単語力のある学習者しか読書ができないと今まで考えられてきましたが、インプット理論では、テキストが分かれば、いつからでも読書ができると提案します。つまり、一ページの中に絵がほとんどで単語がひとつしか書いていないような教材であっても、そこから読書が始まると考えています。インプット理論が提案するFVR(自分から進んでする読書)は、現在知っている言語知識と世の中についての知識だけで読書を始めることができると提案します。

インプット理論は、習得者が読書を通して文法や単語を習得すると考えます。習得者の今の言語レベルより少し上のテキスト(例:多読教材)を習得者が体験することによって、習得者がまだ知らないけれど、内容を理解するということを通して、それを習得できる準備がある言語要素がそこのあるとき、それを自然に吸収すると考えています。

インプット理論では、読書しながら、イラストや写真などをヒントにすることを、不正をすることだとは考えていません。それは、習得にとって、大切な経過だと考えています。知っている文法や単語が使われたテキストしか読まないというのではありません。

インプット理論では、テキストが分かりさえすれば、知らない文法や単語が含まれていてもよいと考えます。

伝統的な学習方法では、「上達する方法は言語について学習することだ」と考えますが、インプット理論では、習得者が読書を習慣とするようになれば、言語の上達は読書を通して続けられると考えます

また、非常に大切な点は、読後に読後感想文を書いたり、練習問題をしたり、英文和訳をしたり、本について口頭発表したり、いわゆる、英語について補助練習をしません。インプット理論では、読書をしたり、話を聞いたりすることが言語養成のための重要な練習と考えています。

習得の手段としての読書のポイントは

  1. 自分で選ぶ

  2. 理解できる本を選ぶ

  3. 興味のある本を選ぶ

  4. たくさん読む

教材用に本の中には、絵や写真のスペースが字の占めるスペースより多いという本もあります。しかし、内容は、大人でも十分に楽しめます。ジャンルも探偵小説のようなものや、恋愛小説のようなものなど、レベル別に多種あります。一番下のレベルから順番に読んでいくのが良いと思います。自分は「英語ができるから」と思って、高いレベルから読み始めるのは薦めません。まずは、一番簡単な本から始めるのが成功への近道です。

理解できる簡単な楽しい読書をすれば、テストにも良い効果が現れる

皆さんの中には、英語で本を読むという習得方法に対して不安に思う人がいるかもしれません。今までそういう方法で学習してこなかったからです。また、読書が苦手だという人がいるからです。また、本を読まない子供たちが増えていると聞いています。「日本語でも読書をしないのに、これから英語で読書なんて出来るわけがない」と、悲観的になる人がいるかもしれません。「英語の能力が高い人だけができる方法ではないのだろうか」と不安に思う人もいるかもしれません。毎年、以下のような質問を受けます。

  1. どれくらい読むのですか?

  2. そんなにたくさん読めるのですか?

  3. 本を読むだけなんて簡単そうにみえますが、英語力がつきますか?

1週間に70から150ページ読みます。無理をしなくても読めます。毎日の時間は限られていますので、今まで違うことに使っていた時間を読書にあてなければならなくなりますが。毎日1時間くらいは読書にあてなければなりませんが、それだけで、英語力がつきます。

必要な読書量(読書時間)は、どれくらいの期間にどれくらいの英語力を養成したいかという目標によります。はやく能力を養成したい人はそれだけたくさんの時間をかけなければなりません。しかし、毎日1時間くらいで十分だと思います。

皆さんは、テストに良い点を取るには、文法の勉強をして、単語を暗記し、過去のテスト問題をたくさんこなすことだと思っていると思います。勿論そのようにしてよい成績を取る人もいるでしょう。しかし、その方法が自分に合っていない人の方が多いような気がします。文法の勉強をする必要はないとか単語を暗記する必要はないとか、過去のテスト問題をしなくて良いというつもりはありませんが、もっと効果のある効率の良い方法は分かる英語によるインプットを頭にたくさん入れることです。

英語がよくできる人は、勉強が大切だと強調しますが、彼らは、勉強以外にも、英語の映画をたくさん見たり、英語でネイティブスピーカーと話したり、外国旅行をしたり、英語で本を読んだりしているのですが、彼らの英語が上達したのは、勉強を頑張ったからだと思っています。しかし、実は学習ではなくて、そのような楽しい経験が言語習得に直接影響を与えたのです。

大学生を対象に調査した結果、理解できる簡単な楽しい読書をするだけで、驚くような英語力が養成できることがわかりました。また、語り聞かせ方法という分かる英語を聞くという方法を読書に加えると、さらに効果が良いことも分かってきました。

インプット理論は、会話や作文や文法学習を禁止しているのではありません。会話や作文などのアウトプットは、言語習得には直接関係がありませんが、間接的に役にたつからです。会話をすることで、自信につながり、勉強意欲が増すかもしれません。たまに、新しい単語や表現を覚えるかもしれません。作文をすることで、新しいアイデアが湧き出てきます。作文は言語習得のためではなく、自分の考えをまとめるために役に立つのです。試験前に過去の試験問題に目をとおすのを禁止したりしていません。英語で会話をする準備ができていないのに話すことを強いられたり、作文を書くように要求されるのは誰でも嫌です。不安な気持ちが膨れると分かるインプットも分からなくなります。それで、アウトプットは、習得者の上達を観察しながら、「話してみたい、書いてみたい」と学生が思うようになるのを待つということです。